京うちわの始まりは、14世紀南北朝時代に遡ります。当時、明と呼ばれていた中国や朝鮮沿岸地を荒らし回っていた倭寇(わこう)という日本人の海賊によって、西日本にもたらされた朝鮮団扇(ちょうせんうちわ)が紀州から大和を経て、京都の貴族の別荘地であった深草に伝わったのが始まりと言われています。「都うちわ」や「御所うちわ」とも呼ばれており、漆や金などの豪華な装飾や優美な絵などが施されています。京うちわの団扇面(うちわめん)はまるで日本画のように完成度が高いため、古くから美術工芸品や貴族間の贈呈品としても高い評価を得てきました。
デザインは俳句や和歌、人物、風景、植物、季節の風物詩などをモチーフにしたものが多く見られ、古来からの日本の美しさが描かれています。
また風が周囲の人々に不快感を与えないよう、隙間を多くする等の風が柔らかくなる工夫がされています。
本品は、そういった京うちわの中でも、デザインに手の込んだ特別な品です。